「再発見と新創造」城下町の挑戦
!ここがポイント
地域資源を活かした新名所。江戸町屋風、大正ロマン、ケータイ、脳にやさしい音楽、寺子屋など多彩なキーワード。
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夢京橋キャッスルロード |
■ 事業実施の背景
滋賀県彦根市は、日本列島のほぼ中央・国土軸の東西南北の交点という要衝にあり、琵琶湖の東北部に位置している。中心市街地には、国宝・彦根城がそびえ、東に石田三成ゆかりの佐和山城跡がある。関ヶ原の戦いのあと徳川四天王の一人、井伊直政がこの地に任ぜられ、その意志を継いだ、長男直継、次男直孝が20年の歳月をかけて「彦根城」を築城したのが始まりで、その後開国の祖井伊直弼公を輩出し、35万石の城下町として栄えた。
そのような歴史的背景を持ちつつ、商店街も栄枯盛衰を辿り、昭和初期より銀座商店街が県内屈指の商店街として賑わった。しかしながら、オイルショック後、郊外への住宅地や大型店、ロードサイド店などの立地が進み、人口重心や消費者の利便性から中心市街地は、衰退へと向かった。
彦根市における中心市街地にある商店街は、12商店街であるが、その数もピークの800店から400店弱と激減している。
■ 事業の概要
@ハード整備
そのような中、平成元年から10年がかりで「夢京橋キャッスルロード」が街路拡幅事業に取り組み、江戸町屋風のファサードに統一され、年間45万人の来街者が訪れるほど賑わいを回復した。この事例は、市内の各商店街へ成功事例として波及した。
その後、平成10年の中心市街地活性化法の施行と同時にTMO構想によるファサード整備事業を花しょうぶ通り(町屋風)・登り町グリーン通り(欧風)・おいでやす(なまこ壁風)・四番町スクエア(大正ロマン風)の各商店街が実施、銀座商店街においては、アーケード整備事業、四番町スクエアにおいては、お客様駐車場・テナントミックス施設(食の館「ひこね食賓館」四番町ダイニング)の設置をおこなった。
夢京橋キャッスルロードと四番町スクエアは観光客を、その他の商店街は地元客を主とする顧客層として事業展開している。
Aソフト整備
各商店街ごとに取り決めたコンセプトにより、商店街整備を行ってきたが、完成が始まりとの認識を持ち、ソフト事業に取り組んでいる。
花しょうぶ通り商店街のナイトバザールや地域一帯で開催されるアートフェスタ勝負市は、滋賀・滋賀県立・聖泉の各大学生や市民団体とともに実施している。昔の寺子屋を利用した「街の駅」も商人塾として定着してきた。
また、登り町グリーン通り商店街では、おかみさんによる「店先カルチャー教室」や地元アーティストを育てる「NOBORIMACHI
グリーンステージ」に取り組んでいる。四番町スクエアは、大正ロマン風のまちとなったが、脳にやさしい音楽「ハイパーソニックサウンド」や六童子、五灯式のガス灯など話題性が多い。
前述の「街の駅」は、滋賀大学・滋賀県立大学のまちなか研究室としての活用やNPO彦根景観フォーラム・NPO湖東焼を育てる会など多彩なメンバーで構成されている。今後組織のLLP化((Limited
Liability Partnership)=有限責任事業組合)も視野に入れサスティナブルな活動を目指すまで発展してきた。
市内の回遊性を高めるため、ユビキタス技術を駆使して、ごく身近なパソコンである「ケータイ電話」を用いて学習型観光を推進している点も波及効果の現われといえる。
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事業の効果
平成17年の新聞・メディアへの記事掲載等を広告料換算すると約1億円の試算となり、大きな事業効果であった。
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事業の課題・反省点
中心市街地の人口減少に歯止めがかかり、住宅・マンションの建設が急増している。都市として住んでよし、働いてよし、暮らしてよしが都市格を形成するとするならば、彦根市の水準は、高いと判断できる。
この20年間で、約80億円の投資をしてきたこととなるが、税金として回収できるかどうかが今後の課題でもある。
歴史と文化のまち「彦根」を訪れる人、もてなす地元の人々の笑顔が溢れ、賑わうことが今後の彦根のバロメータとなろう。
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